少年は、この世でいちばん大切なものが何かを知った。少女は、どうすれば人間の魂を奪えるかを知った。そのときから二人の白夜行が始まった…
今更ながら、東野圭吾『白夜行』を読んだのだけど、おもしろいね、コレ。
最初に読んだ『宿命』はあまりに陳腐だったので以来東野作品を敬遠してしまったのが間違いで、コレに出会うまでに時間がかかってしまった(ドラマには興味がないしな)。ようやく最近になっていくつかの東野作品を読んだのだが、傑作と云われた『手紙』ですら良いには良かったのだがどこかで聞いたことのあるナラティブの集積、という感覚は残ってはいた。読後感としては今回が抜きんでて良い。あー早く出会いたかったよ。以下、ネタバレなので、伏せておきます。
「彼女は一度も振り返らなかった」という最後の一文は十分なる余韻を読者に与える。その中でまず思うのは、雪穂は亮司を愛していなかったのではないか、ということだ。
雪穂に光を照らす存在たらんと亮司の生き方は一貫している。感情を殺した冷徹な言動に始終しながらも、典子に情を見せるなどいわゆる‘人間らしさ’を亮司から垣間見ることができる。亮司は雪穂を愛していたはず。だからこそ、最期に自死を選択したのだろう。一方の雪穂はそうではない。感情の発露は、自らの進路を妨害する他者に対する憎悪でしか見せていない。亮司を愛していたのであれば、これまで交差していた二人のレールはある程度の成功を収めたどこかの地点(たとえば、事業を成功させ、高宮と離婚した際)で合流させようと考えておかしくない。
亮司の献身的な愛情は、雪穂の憎悪という感情から産み出される欲望を現実に昇華させ、そして雪穂の中に悪の華を咲かせる作用をもたらした。その華が成長する過程で、亮司への愛情の芽は摘まれてしまったのではないか。−あるいは、雪穂は亮司を愛していたのかもしれない。彼女が藤原一成に告げたように「どう愛すればいいのか、よくわからない」のかもしれない。しかし、それではあまりにも救いがない。いや、どちらにしても救いはないんだけどね。
二人を巡る第三者から彼らに向けられる視点を精緻に描き、数々の謎が最終局に収束していく息をつかせない展開。東野圭吾の力量を堪能した2日間だった。ただ、その余勢で読んだ続編的小説『幻夜』はイマイチだったのは残念無念。もったいない。
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