評判の『ブラッド・ダイヤモンド』を見た。
『ホテル・ルワンダ』『ナイロビの蜂』『ラストキング・オブ・スコットランド』『ダーウィンの悪夢』とまあ、最近の映画界はアフリカブームのようなんだけど、知られざる第三世界に目を向けさせることに意義は確かにあるわけで、私も背景について興味を抱きながら鑑賞している。
グローバリズム・ヒエラルキーの最下層であり、構成要員の監視の行き渡らないアフリカ大陸のほとんどの国においては、資本主義の持つ本質的な暴力が顕著に現れてしまう。グローバリズムの長所でもある「情報伝達のグローバル化」がもたらす、知り得なければ決して抱くことはない「憧憬」が、人間の弱い部分を突き動かし、人々を悪魔の化身に変える。その様式を利用し生じた彼らの混沌や苦悩を礎とした上に、彼らの流した血の上に、先進国に住む私たちが繁栄を謳歌する。そこに己の意識があるなしにかかわらず。
この作品では、ダイヤに群がる白人とそれに汲みして自らの出自を払拭しようとする黒人、混乱の中にあっても家族の絆をもっとも大事なものと位置づけそれを守るために命を賭す黒人の漁師の姿が、実に対照的に描かれている。ひとは何を大事にするべきなのか?という主題だ。
先進国に住む私たちも結局のところお金に支配されている。私自身、「もっとお金があったらいいのに」とは思うけど、少なくとも現状の生活に不満はない。ただ、自分の欲望を少し制御すれば事足りるのだ。だから、私が悪に走ることはない。ゆえに、その境遇から抜け出したいと悪に手を染めるアフリカの人々に思いを馳せるとき、その根源である「貧困」というものの正体に対して実感がないことに思い至る。私たちは圧倒的に恵まれている。「貧困」が人を狂気に追い込むとして、そのような極限の状況下で、人間というものはその本性を見せるのだろう。「人間の本質は‘カニバリズム(肉食=人食い)’」という考えがある。史実をたどるとそうなのだろう、と思わないではいられない。戦争、中国の文革、クメール・ルージュ、阪神の震災それぞれで行われた非人道な行為…。万一、私が極限の状況に遭遇してしまった際に、己は己の良心に基づいて行動していて欲しい、そう願うことが私を読書や映画鑑賞に対する動機のひとつになっているのだな、と再認識させる骨太な作品。
脚本がうまく練られており、伏線を張り巡らせ、終局へ導く様はお見事。主人公の正体を掴むのに四苦八苦する分、ラストの感動はひとしお。巧いねえ。単なる恋愛描写に展開しなかったところもカッコいい。また、ディカプリオの演技が予想に反して素晴らしかったので記しておく。彼のそれまでの出演作は、彼の演技が浮ついているように感じられたので評価が低かったのだけれど、彼のあまりの成長ぶりにすっかり見直してしまった。そうだよなあ、ハリウッド・スターでさえ、日々の精進を怠らないのだから、凡人の私はもっと頑張らないといけないよな。ジャイモン・フンスーともども、好演かつ怪演でした。感嘆。